2018年11月09日

Advantage2 日本語配列モデル の開発 その3

当社エジクン技研と米国キネシス(Kinesis)社が協力しておこなったAdvantage2キーボード日本語配列モデルの開発について、続きを書きます。今回が最後になります。

下の写真は一部キーのアップです。小さくてわかりにくいですが、左上に[半角/全角]キー、親指で押すところに[変換]キーや[無変換]キーが配置されています。なお、写真をクリック(タップ)すると大きく表示できます。

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◇◇◇◇◇ 2016年 ◇◇◇◇◇
2月23日
今まで議論して仕様を決めた新しいファームウェアが届きました。
前年の11月20日に届いたAdvantage2日本語配列版のサンプルは、ブートローダを備えています。このサンプルを新しいファームウェアに書き換え、テスト開始です。Advantageの複雑な仕組みには別の社員が精通しているので、その社員がしっかりテストしてくれます。
また、日本語配列モデルを含むAdvantage2全般のファームウェア更新について、Willから説明を受けました。いろいろ使いやすくなっているようです。

3月10日
ファームウェアのバグ3つをWillに報告しました。2つはDvorak配列に関するものでした。残りの1つは、Macモードにおける円マークに関するものだったので、当社が解決してみると言いました。

4月4日
Willに報告したバグのうち、Macモードにおける円マークに関するバグを、当社の側で解決しました。原因は、class specific descriptor の LOGICAL_MAXIMUM と USAGE_MAXIMUM の書き間違いでした。
Windowsは0xffを十進数の255と解釈してくれますが、Macは最上位ビットが1なのでマイナスと解釈してしまうようです。

8月30日
更新されたファームウェアがやっと届きました。私が指摘したバグだけでなく、いろいろなバグを修正していたそうです。

9月13日
新しいファームウェアを入れてみたら、前よりもずっとバグが多くなっていて、まいりました。2月23日のファームウェアをベースに更新してほしいと伝えました。

◇◇◇◇◇ 2017年 ◇◇◇◇◇
3月14日
Kinesis社は他の製品の開発に追われ、Advantage2日本語配列モデルの開発はずっと止まっていましたが、少し動き出しました。

3月24日
日常的にAdvantegeキーボードを使っている人が当社にいるか、Willに聞かれました。確かに、Advantegeの機能を理解しているだけではなく、日常的なAdvantegeユーザーでないと、最適なキー配置は考えられないでしょう。
当社には、Advantageの詳細を深く理解している社員がおり、お客様からAdvantageの設定方法などについて聞かれたときは適切に対応することができます。この社員はAdvantegeキーボードをときどき使っているだけでしたが、常に使ってもらうことにしました。

4月28日
Willからキー配置についての提案が届き、当社からも考えを伝え、また議論が始まりました。内容は、円マークの配置や、日本人は「〜」をよく使うから押しやすい位置に配置する必要がある、などです。

6月9日
Willが、Dvorak配列を少し変更するのを提案してきました。Dvorak配列は米国版と全く同じでよいと言ったのになあ、と思いつつ、別の社員と再検討しました。そして、Willのアイデアの方がよいと気付きました。やはり、何十年もAdvantageのことを考えている人は違うなあと感心しました。

下の図は、Advantage2日本語配列モデルをDvorak配列に設定したときに、各キーから出力されるものを示しています。実際のキーの印字とは異なるので御注意ください。各キーの右側に表示されているもの(Shiftキーといっしょなら大文字または右上に表示されているもの)が出力されます。表示が左右に分かれていない場合は左側または全体に表示されているものが出力されます。日本語入力にうまく適合したDvorak配列になっていると自負しています。なお、図をクリック(タップ)すると大きく表示できます。

Dvorak.jpg
7月7日
キー配置についてWillが最終案を送ってきて、当社が間違いを1つだけ直しました。これで、やっと最終合意にこぎ着けました。

7月21日
Willが、手元にある一般的な日本語キーボードを見ると、変換キーが右にあって無変換キーが左にあると言ってきました。これと同じで、Advantage2日本語配列タイプでも、変換キーは右に配置した方がいいのでは、とのこと。
これには、日本人はスペースキーでひらがなを漢字に変換する、Advantage2ではスペースキーが右手でしか押せないので、変換キーを左に配置した、と説明しました。これにはすぐに納得してくれました。

7月27日
更新されたファームウェアが届きました。
しかし、バグがたくさん見つかり、報告しました。

8月4日
Willが、レスキューコマンドについて教えてくれました。Advantage2に生じた問題を、強力に解決する手段のようです。

9月9日
また更新されたファームウェアが届きました。7月27日に報告したバグを修正し、マウスボタンなどを割り当てる機能が追加された、とのこと。

10月14日
Macモードにおける数字8のキーのキーパッドレイヤの出力について、2016年2月15日に、私が主張するとおりと合意していたのですが、Willが主張するとおりに変更しました。Willのこだわりはかなり大きいな、と思ったからです。

11月22日
キー配置の図が送られてきましたが、いくつか間違っていたので、修正を頼みました。また、日本語特有のキーの印字がずれていたので、これも修正を頼みました。

12月4日
日本語キーキャップの生産が、米国配列タイプなどのキーキャップと同時に始まることになりました。日本語配列タイプは生産数が少ないので、いっしょに生産したいとのこと。

◇◇◇◇◇ 2018年 ◇◇◇◇◇
1月30日
更新されたファームウェアが届きました。

2月7日
日本語配列タイプキーボード、型番KB600-LF-JPが届きました。社内でテストを始めました。
また、日本語配列タイプのキーキャップも届きました。これまで米国配列タイプを買ってくれた方に、このキーキャップとファームウェアを送り、日本語配列タイプのモニタをやっていただくためです。

2月14日
Advantage2日本語配列タイプのモニタを募集し、応募された方に日本語配列タイプのファームウェアとキーキャップを送りました。たくさんの方から応募があり、追加募集をおこないました。

モニタの方々からのアンケートが集まった後、集計しました。幸い、バグの報告はありませんでした。

4月16日
アンケートの回答の中に、Home、End、PageUp、PageDown の4つのキーが使いにくいという意見がありました。集計結果をWillに送ったところ、この意見が気になったようです。
確かに、これらのキーはキーパッドレイヤに入っているので、アクセスが面倒です。当社としては、これら4つのキーのうち2つぐらいは、あまり使わないキーの位置にリマップできるから問題ないだろうと考えていました。
Willは、アドバンテージ専用フットスイッチのシングルをセットにしたらどうか、と言ってきました。フットスイッチを足で踏みさえすれば、簡単に上記4つのキーにアクセスできるわけです。このアドバイスに従い、セット商品も販売することにしました。

以上で、Advantage2日本語配列モデルの開発ストーリーは終わりです。当社としては、Advantage2キーボードが持つ優れた特性を、日本語入力に存分に活かした最高の作品に仕上がった、と自負しています。
皆様、Advantage2日本語配列モデルをよろしくお願いいたします。
posted by Q at 10:20| Comment(0) | Kinesis